不動産業者はコンビニの数より多いと言われています。
令和4年度末において業者数は129,604業者となり、9年連続で増加しています。
その背景として、資本金が少なく参入しやすいということが考えられますが、その分毎年の廃業数も少なくはありません。
直近10年は比較的不動産業界は安定しているので、3〜4,000件で推移していますが、年によっては6,000件を超すこともあります。
廃業の理由は主に、経営難と後継者不足です。
後継者不足については、ここで論じませんが、経営難の根本的な原因は「集客ができないこと」です。
不動産業界に限らず集客ができるかできないかは非常に大きく、経営におけるメジャーな格言で「マーケティング・イズ・キング」という言葉もあるくらい、経営における集客の重要性はご理解いただけると思います。
この記事に辿り着いた方は、おそらく不動産会社を経営していて集客に悩んでいる経営者、もしくは個人事業主として活動する不動産エージェントの方のいずれかだと思います。
筆者も不動産会社を10年に渡り経営してきたこともあり、同じように集客に悩んだ時期もあり、そこから実践と成果を積み重ねてきました。
この記事では、今後の集客に少しでも役立つように、筆者が実際に集客活動の中で得られた知見と手法、そのポイントや注意点などについて解説していきます。
不動産仲介業の集客で成功する3つのポイント
それではまず、不動産仲介業の集客で成功する3つのポイントについて解説していきます。
1、不動産集客に必要な知識とその理解
不動産仲介業を行うにあたって、集客に使えるものにどんなものがあって、どういう使い方ができるかを理解する必要があります。
例えば集客の手段として、考えられるのは、チラシやホームページ、ポータルサイト、一括査定サイト、SNS、紹介など多岐にわたります。
まず自社が狙う顧客層がどの手段を利用している頻度が高いのかを見極める必要があります。
例えば、住宅購入者に対して集客をしたいのであれば、メインのターゲットは30代になりますので、ターゲットが利用しているであろうツールを選んでいきます
住宅売却であれば、年配の方も多いので、チラシなどのオフラインの手法も有効と考えられます。
集客を行うにあたって、まず何を売るためにターゲットを誰にするかをしっかり考える必要があります。
ここがしっかりできていないと、売りたいものとターゲットが噛み合っていない状態になってしまい、いくら費用をかけたところで効果が出ません。
2、不動産仲介業の集客方法と競合との差別化のコツ
不動産仲介業の集客において、いかに競合と差別化できるか。
差別化というのは、他社と比較して他社にはない強みのことで、その強みが欲しいがために顧客が自社を選んでくれるものです。
差別化こそが集客において成功するために、非常に重要なポイントになります。
差別化をするためには、自社が攻めたいと思うマーケットにおいて、他社がどのような集客の仕方をしているのかを研究する必要があります。
そして、他社の集客方法がある程度わかったら、その中で自社や自身にとっての強みと、他社が取っていない集客方法は何があるかを徹底的に洗い出します。
そうやって競合との差別化をしていきます。
ここで差別化するコツ・ポイントとして、物件で差別化をしようとしないことです。
物件でなんとか差別化しようとして、未公開物件で消費者の気を引こうとしたり、ホームページに物件情報をたくさん掲載して何とか集客をしようとしても、基本的にはうまくいかないと考えてください。
筆者も昔、同じようなことをしましたが、正直あまり上手くいきませんでした。
やはり物件で差別化しようとすると、量と質でしか差別化できませんが、量はポータルサイトに太刀打ちできないですし、質は大手に太刀打ちできません。
そのような競合と同じ土俵で戦うのは時間とお金の無駄なので、避けるべきだと考えています。
3、不動産仲介業の集客における成功の要因と注意点
物件ではない、自社の強みと集客の切り口をどれだけ一致させることができるか。
それが不動産仲介業の集客における成功の要因になります。
ここで注意すべきは、集客のためのメッセージが顧客の不安や課題と一致しているかどうかです。
例えば、ファイナンシャルプランナーの資格を取得して、予算のシミュレーションをお手伝いするというサービスは、住宅ローンを借りるにあたり、不安や悩みを感じる人もいるので、集客のためのメッセージが顧客の不安や課題と一致しやすいです。
ペットを飼っている人のために、ペット可物件でなく、周辺のペット関連サービスの情報なども一緒に出すようなサービスにもニーズがあるかもしれません。
一方で、社有車があるので送迎サービスで差別化をしようとしても、他社と比較して自社を選ぶ強力な動機づけになりますでしょうか?
おそらく、そこまでならないのではないでしょうか。
つまり、自社やご自身の強みや特徴と、顧客の不安や課題の解決が一致するものをいかに見つけるか。
それが不動産仲介業で成功するための要因となります。
マーケティングの基本になりますので、この考え方はぜひ覚えておいてください。
不動産集客の具体的な手法と活用方法
次は不動産集客において、具体的にどのようなツールを活用して集客を行っていくのか。
それぞれのツールについて解説していきます。
SNS、アプリ、ホームページなどのオンラインツールを活用した不動産集客
近年の集客の主力はオンランツールになってきています。
広告もテレビや雑誌でなく、オンライン広告の市場が最も大きいものとなっています。
その中でホームページは多くの不動産業者が利用しています。
今の時代、ホームページがないことの方がデメリットとなるような時代で、何らかしらのホームページを用意している不動産業者も多いのではないでしょうか?
また近年ではインスタグラムやYoutube、TiktokなどのSNSを活用している不動産業者も多いのではないでしょうか?
ホームページやYoutubeに関しては、全年代が見ていると言われています。
またSNSは比較的若い年齢層が利用しています。
看板、チラシ、新聞、雑誌などのオフラインツールを活用した不動産集客
古くから不動産業界で利用されてきた集客方法です。
若い年齢層にはあまり届きませんが、中高年から高齢の年齢層を狙った広告であれば効果のあるツールです。
特にチラシは以前よりも効果は減っているものの、効果自体がないわけではないので、今も続けている不動産業者も多いのではないでしょうか。
小さな不動産屋でもできる口コミや紹介制度などの施策
また口コミや紹介制度をうまく活用して、集客につなげている不動産業者もいます。
紹介は新規で集客するよりも、効率的でかつ成約率の高い集客ができます。
また口コミなども、Googleやその他ツールなどを活用して評価を蓄積していくようにすれば、それが資産となり、永きにわたって集客に役立ってくれます。
不動産仲介のオンライン集客戦略と最新トレンド
次はそれぞれのツールに応じたターゲットや戦略、注意点やポイントなどを解説していきます。
ここではオンラインに特化して解説します。
またここに記載がないツールもありますが、筆者として運用実績がない、もしくは効果があまりないものは省略しています。
ホームページやブログ
よほどの高齢者でない限り、ほとんどの年齢層に届きます。
Z世代と呼ばれる25歳以下の年齢層は、最近SNSで情報収集することが多いと言われていますが、それでも集客の本流と言えるのではないでしょうか。
ただし、ホームページやブログで集客をするのは、かなり難易度が高いです。
SEOと言って、Googleなどの検索エンジン対策をしながら記事を書いていき、徐々に流入数を増やすことが戦略となります。
そしてSEO対策には、ハイレベルな質と量の両方が求められます。
競争も激しく、少しくらいがんんばったところでほとんど効果はありません。
またSEO対策や記事を書いてくれる業者に頼んでも、お金がかかる割に、なかなか結果は出ません。
ブログを書くにしろ、お役立ち記事を書くにしろ、ユーザーのニーズを見極めるためのリサーチから始まり、記事の構成や分量、そしてユーザーに役に立つものであるかどうかなど、かなり難易度が高いです。
しかし、この後に解説する他の集客ツールと組み合わせることで、単体で施作をするよりも効果を上げることができます。
ですので、ホームページやブログは、他の集客ツールからやってきたユーザーをファン化する、問い合わせにつなげるツールという立ち位置で考えていただくといいのではないかと考えています。
Youtube
ここ最近、不動産系のYoutubeチャンネルもかなり増えてきました。
チャンネルの種類は大きく分けて、ノウハウ系と物件系になります。
ノウハウ系は筆者が運営している「ハウスクローバーちゃんねる」をはじめ、様々なチャンネルが存在しますが、住宅売買の注意点やポイントなど、教育動画として顧客の教育とファン化をしていきます。
物件系だと、ルームツアーなどの動画を集めたチャンネルで、個性的な物件やレア度が高い物件を公開することで、集客につなげています。
どちらがいいかは、自社の業態やターゲットによります。
少し前までは、比較的ブルーオーシャンですが、最近は競合が増え、ややレッドオーシャン化してきています。
動画を継続的に撮影・編集できる環境作りが何より大切で、継続力も求められます。
しかしながら、ホームページやブログと並び、集客力の非常に高いツールとなっています。
Instagram(インスタグラム)
拡散力は強くないものの、Instagramも不動産仲介業の集客として利用できます。
男性よりも女性をターゲットにしたいときに最適なツールです。
Instagramというと綺麗な画像が求められるイメージですが、筆者が運用しているアカウントのように文字系のものでも集客はできています。
Instagramのプリフィールページのリンクに、自社のホームページやブログなど、誘導したいURLを貼っておくようにしましょう。
X(旧 Twitter)
筆者は集客ツールとして利用はしていませんが、拡散力が非常に高いので、運用歴が浅くても集客につなげられることもあります。
男女問わず、リテラシーの高いターゲットが多いため、投資系不動産などに向いていると思います。
文章力に自信がある方はチャレンジしてみてください。
プロフィール欄やツィートにリンクも貼れますので、拡散させるような文章を発信し、ホームページなどに集客するという使い方をします。
TikTok
昔はターゲットが若いイメージでしたが、最近では30代、40代の利用者も増えていきています。
Youtubeのように動画の本数がなくても、うまく運用すれば10本ほどで拡散することもあり、運用歴が浅くてもチャレンジしやすい媒体です。
こちらもプロフィールページにリンクを貼ることができますので、動画を拡散させてホームページなどに集客するという使い方をします。
HOUSECLOUVER(ハウスクローバー)
ハウスクローバーは、筆者が運営をしている住宅売買の分野で、担当者と消費者がマッチングできるサイトになります。
物件での集客ではなく、担当者のサービスやコンサルティングに魅力を感じるユーザーが集まるサイトで、自身の資格やスキル、サービスを差別化してユーザーにアピールができる、新しいプラットフォームです。
ユーザーに利用してもらうことによって評価が貯まり、評価が多ければ問い合わせも増える仕組みになっています。
不動産会社での利用はもちろん、個人のエージェント単位で申し込みもできますので、ぜひ早めのご利用をいただき、先行者利益を積み上げてください。
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https://agent.houseclouver.jp/
agent.houseclouver.jp
やってはいけない集客方法
次は不動産仲介の集客を行うときにやってはいけないポイントについて解説します。
ひたすら売り込みだけをする
まずオンラインで集客をするときに、多くの人が間違ってやってしまうのが、ひたすら売り込みをすることです。
はっきり言って、売り込みは嫌われます。
ご自身の立場で考えてみてもわかりますが、売り込みばかりをしてくるSNSのアカウントやメルマガを読む気になりますでしょうか?
基本的な考え方として、役に立つ情報発信が9割、売り込みは1割くらいの感覚で大丈夫です。
しっかり役に立つ情報発信ができていて、ファン化が進んでいれば、そもそも売り込みをしなくても売れていきます。
仲介手数料の値引き戦略
また最近、仲介手数料の無料や半額を行う業者も増えてきていますが、あれはやらない方がいいです。
手数料の値引き自体、すでにレッドオーシャンで、差別化にはならないですし、経営的に疲弊するだけです。
また安さに魅力を感じて集客できる顧客は、言い方は悪いですが、質は良くありません。
集客の中で差別化を図り、ファン化をして、正規の手数料でサービスを利用してもらえるように注力するべきです。
不動産集客を加速するためのツールとシステム
それでは、最後に不動産仲介の集客で、ぜひ利用したい便利なツールについて解説します。
ペライチ
ペライチは見栄えのいいランディングページを自分で簡単に作るサービスです。
ランディングページとは、SNSなどに貼っておくリンクから訪れるサイトのことで、ホームページも広い意味でランディングページといえます。
ただ、ホームページやブログが、色々記事を読んでもらい回遊してもらって、最終的に問い合わせに繋げることが目的とするもので、ランディングページは特定の目的に絞ったページのことを指して使われる言葉です。
例えば、セミナーや問い合わせに特化したサイトでページ数が極端に少ないものを言います。
実際に筆者が運用しているものを紹介すると、
・オンラインセミナー
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住宅購入者向け オンラインセミナー
業界歴15年以上の現役トップエージェントが講師を務める、住宅購入者向けのオンラインセミナーです。参加満足度98%以上の人気コンテンツです。これから住宅購入をお考えの方はぜひご参加ください。
houseclouver.net
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住宅購入者向け、不動産エージェントとのマッチングサービスです。予算・物件・担当者。住宅購入で失敗しないためのサービスがひとつに。登録・利用は無料。「こんなのを探してた!」の声が続々。
houseclouver.net
などを作成し、用途に応じて使い分けています。
余分な情報を極力減らすことで、目的となる行動を起こすことを促す専用サイトになります。
ちなみにこちらのページを作成しているのは、「ペライチ」というサービスで、様々な種類のランディングページやサイトを自分で簡単に作ることができますので、以下のサイトから参照してみてください。
メルマガ
不動産仲介で売買の場合、検討期間が長くなりますので、メルマガで長期的に情報を送る戦略も有効です。
メルマガは読まれなくなったと言われていますが、まだまだ読まれていますし、筆者も10年近く利用しています。
メルマガを発信するためには、専用のシステムが必要になりますが、こちらのサービスが安いプランもあって始めやすいかと思います。
LINE@
LINE@も配信ツールとして、非常に有効です。
メールよりも届きやすいですが、ブロック率が高いので、頻繁な情報発信には向かないものの、メッセージのやり取りのハードルを下げるツールとして有効でしょう。
通常の公式アカウントを利用するだけでなく、ステップメールや公式アカウントよりもより詳細のデータを見ることができるシステムなども開発されていて、用途に合わせて利用できます。
不動産仲介業で集客を成功させる方法
不動産業界は成約単価が高いため、広告単価も高く、中小零細企業は大手と違う戦い方をしなければ勝てません。
この記事で紹介してきた集客方法やツールなどは、他の業界ではかなり使われていて、不動産業界でも利用する業者も増えてきていますが、まだまだ参入できる余白はあります。
私が運営しているハウスクローバーもそうですが、早めに始めることで先行者利益と優位性を確立することが、最も効率がいいと思いますので、物件情報に頼らない、自社やご自身にあって集客方法を確立していただければと思います。